「イデオネラ・サカイデンシス」という名前をご存じですか?世界的にプラごみ問題が注目をされ、ある特徴をもつことで話題となりました。
今回はプラごみ削減の救世主となる細菌のお話です。
目次
1.リサイクルの現状
2.イデオネラ・サカイエンシスとは?
3.今後の展望
4.最後に
リサイクルの現状
リサイクルには、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3つがあります。
マテリアルリサイクル
ペットボトルごみがペットボトルに生まれ変わるとか、廃プラが駅ホームのベンチやバケツに生まれ変わるなど、モノからモノへと生まれ変わるもの。但し、このリサイクル方法だと、リサイクルする度にプラスチック分子が劣化してしまい、どんどん品質が悪くなり、使えないものになってしまう。
ケミカルリサイクル
廃プラをひとまず分子に分解してからプラスチック素材に変えるので、何度でも再生できる。理想的なリサイクルのように聞こえる。しかし残念ながらこの方法は、分子に分解する工程に大掛かりな工場がいるため、資金やエネルギーが結構かかる。
サーマルリサイクル
ペットボトルなどのプラスチックをごみ焼却炉で燃やし、その熱をエネルギーとして回収する方法。回収された熱は火力発電や温水プールに利用されたりしている。
世界のPET樹脂総生産量(2013年)は約5600万トンで、リサイクルされているのはペットボトルのみです。それはペットボトル生産量(613万トン)の37%、PET樹脂総生産量の4.1%に過ぎません。使用済みPET製品の多くは廃棄されています。
現在の技術では、リサイクルやゴミの処理に専用の設備や膨大なエネルギーが必要になり、コスト面や環境的な問題から、なかなか進んでいません。
イデオネラ・サカイエンシスとは?
PETボトルは自然界の生物による分解ができないため、半永久的に存在すると考えられてきました。ところが近年PETボトルを食べる細菌が発見されました!
その細菌の名前が「イデオネラ・サカイエンシス」です。
この細菌は京都工芸繊維大学の小田耕平名誉教授が大阪府堺市のリサイクル工場から発見し、細菌名にも「サカイ」が入りました。その後2種類の酵素によって分解されることも解明し、諸外国も含め大きな反響がでたようです。
小田名誉教授の弟子である吉田昭介特任准教授(奈良先端科学技術大学)はこの細菌が効率よく分解できる条件を探す応用研究を進めています。
今後の展望
微生物・酵素を用いたPET分解は化学処理と比べ、エネルギーの消費が小さく、環境にやさしい手法です。ただし現状では分解に時間がかかることと大量処理に活用できないことが課題です。
現状の実力では、「30℃の環境で6週間かけて親指の爪ほどのサイズのペット樹脂を完全に分解した。」というレベルだそうです。
しかしながらドイツやイギリスの研究チームが分解酵素の研究を進めるなど、一刻も早い実用化が期待されています。
最後に
今回はPETを食べる細菌を紹介しました。生分解性プラスチックの開発は進んでいますが、すでに海の中にあるマイクロプラスチックの回収は現状困難です。今回発見された細菌が海の浄化作用にも活用できればと期待しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。